私の母は定年退職したが、昔は幼稚園で働いていた。
小さな町なので、幼稚園は少ししかないため、幼少期の私は年の近い子に、「○○先生の子ども」とよく言われた。
母は町のほとんどの子を知っているだろう。それくらい狭い町なので、中学高校の同級生の幼少期も知っている子が多い。
少し前、実家に帰ったとき、
「高校の同級生にK君っていたでしょ。その子今居酒屋で働いているのだって」
と聞かされた。
そこから始まるK君の幼稚園の頃の昔話。
すごく綺麗好きで、散らばったオモチャを見つけるとすぐに片付けてた。
すごく友達想いの子だった。
おかあさんが教育熱心で、幼稚園の時から塾に行っていた。
などなどの心暖まるエピソードがどんどん出てきて、担任した子をそんなにも覚えているということに、凄いと思った。
そして、悲しくも思った。
K君は高校で大人しい子をいじめたりしたせいで、回りからハブられて不良ルートに入ったからだ。
正直、自業自得だと思うし、僕自身あんなクズと関わりなんて絶対持ちたくない。
でも、母の記憶の中ではK君は今でも綺麗好きで友達想いの良い子なのだ。
幼少期は誰もが純粋な良い子だったのだと改めて思った。
そして、幼稚園の頃から塾に入れるくらいのK君の母は、田舎の居酒屋で働くことを望んでなかっただろうな。
勿論そんな事実を母に言えるはずもなく、適当な相槌で聞き流したが、そういうことをしなければならないということも悲しかった。
せめて、母の記憶の中では良い子であれ。